国内の動向を見るにはひとつのコンポーネントとして個人消費の動向は重要ですので、マインドデータと、ハードデータを併せて見ています。
消費が、長い目で景気の山谷を生み出すと認識しています。
例えば、米国では小売売上高という統計を踏まえて、金融政策の動向を見ることが多いです。勿論、直接株価の予想やGDPを予想するという意味でも大事ですが、金融政策の動向を予見するという意味でも非常に重要です。
それは日本でも同様です。ただ、日本の場合は最終的にはインフレにつながる気配が感じられるかどうか、というところが大事です。その意味でCPI等の物価統計と併せて消費統計を見て、日銀の政策判断を予見する重要な判断材料にしています。
例えば、企業が値上げした時に売り上げが落ちる経験をしてしまうと、その後、再値下げに戻ります。逆に値上げしても消費が落ちていない、というのが確認できれば消費活動、物価上昇の基調が強いということで、日銀の追加緩和が遠のいたのではないかということを予見します。
全体感を見るためにマクロ統計として、例えば百貨店の銘柄を見る上で百貨店協会が発表する月次の売上高は必ず確認します。さらに当社の場合は、中長期の投資戦略の立案が重要になるため、単月ではなく長い目線でこの業界がどうなっているのか、トレンドは何なのか、という関心を持ってマクロ統計を活用しています。
まず、これはアメリカも同じだと思うのですが、サンプリングに課題があり、例えば、家計調査は調査の対象としている人たち自体に偏りがあるのではないかと感じています。
その点、そういった偏りが少しでも是正できるよう、サンプルの幅を広げてほしいですね。
そして、新しい消費形態もその都度感応度高く反映させていく、もっともっとスピーディーでビッグなデータを獲得することができれば良いと思います。
家計簿を全て見られるのなら別ですが、例えば、根本的な消費の仕方の変化を指し示す部分として、ラクマやメルカリのようなCtoCが今後も増えるとなると、それをどのように捉えるか、株式市場を見る上で非常に重要です。
その通りです。
我々はエコノミストと違い、純粋なマクロ調査ではなく、投資戦略を立てるのが仕事です。従って、ルーチンとしてある程度経済指標を見るけれど、それと同時に必ずマーケットのコンセンサスをチェックします。だからこそ、今の統計では捉えられていない動きを捉えることには非常に関心が高いのです。
例えば、クリスマスシーズンで、既存の経済統計を見ると、数字が思っていたより低かったとします。それに対してマーケットは素直に「消費が弱いんだ」と解釈して反応したとします。しかし、私たちは本当にそうかと疑うわけです。物理的に店舗に行かなくなっただけで、逆にオンラインの消費が伸びているから、それを含めるとむしろ去年より消費が多いぞという分析をします。現状、このような分析ができるデータは決して多くありませんが、そういうことが出来れば投資戦略を立てる者として、業務の幅が拡がると思います。
非常に期待しています。
例えばモノ消費、コト消費みたいなテーマってよく話題になるじゃないですか。そういった消費のトレンドを捉えることが出来ると思います。例えばクレジットカードの特性を使って男女別で消費活動を見ることが出来れば、世帯の中で男性が服を買えるようになったというのは本当に景気好転の兆しかもしれない。年齢別で見ることが出来れば、シニアの層、貯蓄はあるけど今まで時間がなかった人たちが消費を活発に行い始めるかもしれない。そういう仮説を立てることもできますし、その仮説に対して実際にどうなんだろうという検証をするデータになり得ると思います。既存の情報では、どうしても定性的なものに頼らざるを得ません。ここを変えるポテンシャルを感じます。
指数として多様性があるといいと思います。今や大量生産・大量消費の時代ではないので、ヘッドラインの消費のパイの動向だけ見てもトレンドをつかめません。年齢別、男女別、地域別と様々な切り口でみると、それぞれの動きがバラバラに見えてくると思います。政策的な観点でも、あるいは投資判断という観点でも、全体をざっくり見るのではなくて、セグメント毎にみることが必要だと思います。
必要とされているのは逆ですね。
大量生産、大量消費の時代であれば、より画一的なプロダクトをみんながみんな購入するという世界だったので、それでも十分分析に足る部分はあったかもしれません。しかし、現代はかなり消費が多様化して各セグメント毎にメーカーも小売りチャネルも特化しているから、セグメント毎に消費活動を把握しなければ、外部環境としての需要の浮き沈みを把握しづらいわけです。
例えば、「爆買い」というのがありますが、これは投資テーマとしては非常に大きい。しかし、消費全体の平均値でみては把握ができない。だから外国人観光客という特定セグメントに絞った消費動向を見たい訳ですが、今まではデータの制約があるが故に、定性的に論じるしかないテーマでした。そういったものをビッグデータが解決してくれればこれは大きい。このように投資テーマに沿ったセグメント毎のサブインデックスを分析できると非常にありがたいと思います。
目的によって違いますが、GDP予測であれば家計調査や業界統計を使います。しかし、月次や四半期の変動を追うには使うに堪えず、信頼性・正確性に疑問を持ちながら使用しているのが実情です。また、日銀の消費活動指数は公開が40日後と少し遅いとも感じています。一方、業界統計についても、百貨店、スーパー、コンビニは20日後、外食は25日後に公開であり、速報性は評価していますが、サービス消費をみることができないため網羅性には限界があると感じています。
それらの統計への関心は高いです。報告書を見る限りは四半期のある期間に空港でインタビューを行うという形式のため、かなりバイアスのかかっている統計ではあると思いますが、速報性があって有用だと思っています。10-12月の数字が1月に出てくるのというのは早いと考えています。
商業動態統計や家計調査等の定量的なマクロ情報も話題になりますし、アナリストから情報を仕入れて、今月の外国人消費が芳しくない等の定性的な情報も話題になります。
しかしこうした情報には、バイアスがあるという課題があります。定性的な情報にバイアスがあることは勿論、定量的な情報についても回答する人がある程度特殊であり、サンプルにバイアスがかかっています。
例えば、家計調査では毎日家計簿をつけることがどれだけ一般的なのかという問題もあります。サンプル数を今の100倍くらいにするか、今の家計消費状況調査のように、月1回家計簿を記入する方法にするとよくなると考えています。また、家計調査も2人以上世帯がデフォルトであり、世帯数の約三分の一を占める単身世帯を考慮できていないという問題が残ります。そういう意味ではサプライ側のデータ、つまり商業動態のほうに信憑性がありますが、サービス消費は含まれないため、どちらの統計調査においても色々と課題は残ります。
テーマパークやホテル、フィットネスクラブ、介護などにも関心がありますが、特に関心が高いのはオンラインサービスです。しかし残念ながら情報が不足しており、分からないことが多く存在しています。
その通りです。例えば、ゲーム業界はゲームの予約状況とかで見ることはでき、テーマパークは月次の入園者数などで見ることができます。また、スピード感等の問題はありますが、交通機関や輸送機関などは統計があります。
しかし、オンラインの会社の場合はそういった情報を見ることができません。
オンラインサービスを分類してインターネットの動向をはかる上では、規模感がわかればいいと考えています。例えば、1万人のデータがあって、1年間で何億円くらいになるなどです。家計調査によると8000世帯で年間30億円の消費があり、そこからインターネット消費がどのくらいの規模感になるか考えられると興味深いと思います。
カード情報は興味深いと思っています。例えば、政府統計や業界統計などの統計と比べてどれくらい乖離があるのかという点です。乖離しているほど、そこに面白い情報が眠っているかもしれないと思います。
また、既存統計にはサンプルにバイアスがあるという課題がありましたが、「JCB消費NOW」では家計調査特有のサンプルバイアスを解消できると思います。さらに、スーパーはともかく八百屋でカードを使う人は少ないでしょうから、野菜の価格変動などは極力除去されるでしょう。これにより、投資のテーマにそぐいやすいと思います。
ただし、家計調査とは異なるサンプルのバイアスも出て来ると思います。例えば、年齢などです。ただ、前年比のデータがあれば、それはなくなっていくと思います。
一方、カードが使われやすい業種に偏る可能性があるため、データに偏りが生まれることが考えられます。また、時系列的にカードの消費割合が増えているため、そのトレンドを排除する必要があります。
性別・年齢、そして利用業種を組み合わせて特定の投資テーマカテゴリなどが作れそうな気がします。データセットに「単価」の情報がついてくれば高価、安価といったエッジが出てくると思います。
経済社会の登場人物は大きくわけて家計,企業,政府です。社会の幸福として目指すべきは家計が幸福になっているかです。
例えば,企業部門がたくさん儲かって内部留保がたまったとしてもそれだけでは社会として幸福とは言えません。同様に,政府部門におカネが集まって(例えば税金がたくさん入ってくる)潤ったとしてもそれで社会が幸福になったとは言えません。あくまで大事なのは家計部門です。
では家計部門の幸福をどうやって測るかというと,ひとつは所得です。家計の所得が増えればそれは良いことです。しかし家計部門の所得というのはまだピントが少しずれています。所得が増えて貯金が増えればそれでいいかというと決してそうではなく,やはり最終的には稼いだおカネを使うことによって幸福が高まります。もちろんおカネが全てではありません。おカネでモノを買う以外の要素も幸福には深く関係してきます。
しかし資本主義社会である以上,やはりおカネでモノを買ってそれが人々を幸せにするという側面が大事です。「消費」というのは人々がおカネを使う行為を計測した統計ですから,上に述べた意味で,人々の幸福度合いを測っているとも言えます。
こういう認識を政府や中央銀行はもっているので,その国の「消費」がどうなっているのかということには特別な意味があります。国の経済活動を測る統計としてはGDP(国内総生産)というのがあり新聞などにもしばしば登場しますが,「消費」はGDPの最も大きな部分(6割)を占めています。
そのため,景気の良し悪しを判断する際には「消費」がどっちの方向に向かっているかが重要なポイントになります。
最も広く使われているのは総務省統計局が行っている家計調査です。
これは1万世帯弱の家計に家計簿をつけてもらって何にどのくらい使っているのかを調べるというものです。家計調査はGDPの消費を推計する際の原データとしても使用されています。この家計調査に協力してくれる人を探すのは難しいと聞いています。皆さん日々の生活に忙しいのでなかなか政府の統計作成に協力する余裕がないのかもしれません。回答者の負担が軽くないという点は克服すべき課題です。
家計調査以外では経済産業省が行っている商業動態統計というのがあります。家計調査は家計の側から消費の数字をつかもうとするのに対して商業動態統計はモノを売るお店の側から消費の数字をとろうとするものです。購入と販売というのは当然密接に関係しているものですが,乖離することも少なくありません。
例えば,最近はだいぶ下火になったと言われている爆買いですが,これは販売サイドである商業動態統計には現れる一方,購入サイドである家計調査には現れません。
また,両方に共通する難点としては公表が遅いということが挙げられます。現代の生活やビジネスの統計の速度が追いついていないということです。
2017年1月に統計改革推進会議というのが発足し,菅官房長官を中心に統計の全面的なリニューアルの作業が進んでいます。私もメンバーとして参画しているのですが,かなり大掛かりな取り組みと言ってよいと思います。どうしてこんなことが始まったのかというと底流には2つの要因があります。
第1は,経済成長率の鈍化です。日本経済はかつては高い成長率だったわけですがここ20年ほどは振るいません。経済成長率の数字は毎年ゼロの近くをウロウロしています。景気が悪いとマイナスになり,少し持ち直すとプラスになりという具合で,いずれにしてもゼロの近くというわけです。しかしマイナスとプラスでは大きく意味が違うわけで,マイナスであれば適切な対策を政府や日銀が打たなければいけない。そうなると,マイナスなのかプラスなのかを精緻に測る必要が出て来る。一昔前のように毎年10%も成長しているのであればその周りで少々数字が動いても騒ぐことではない。だからさほど精密に測る必要もない。しかし今のようにゼロを挟んで数字が微妙に動くとなると精密な計測が必要で,そのためには精度の高い統計が必要になってくるというわけです。実はこれは日本だけの話ではなく主要先進国はどこも似たり寄ったりで,グローバルな課題になっています。
第2は,統計にリアルタイム性が求められるようになっているということです。
先ほども触れたように,現代の生活やビジネスでは情報通信技術の発展を背景として速度がどんどん上がってきています。迅速な意思決定が求められているということです。ところが統計の世界はまるで時間が止まってしまったかのような有様で,戦前または戦後まもなくの頃に決められた流儀が今も残っています。
統計は継続性が大事なのである程度の保守性はやむを得ないと思うのですがそれにしても現状は遅れがひどすぎます。その結果,ビジネスや生活の現場では国の作成する統計が活用されないという事態が起きています。
例えば2か月遅れくらいで何かの統計が出てきても,それは既に過去の話なので,いま現在の意思決定を企業が行う際には役に立たない。これではまずいということで統計の迅速化を図ろうということを政府も考え始めたわけです。
今回の取り組みは「高精度かつ迅速な統計を」という先ほど申し上げた時代の要請に正に沿うものだと考えています。
私は東大の同僚の柳川範之教授と「統計の民営化」というコンセプトを提唱しています。どういうことかと言うと,これまでは統計と言えば政府の専売特許だった。データを集め加工し公表してという全てのプロセスを政府がやっていた。民間では不可能あるいはあまりにコストがかかるので政府しかやれなかったのだと思います。
しかし今やデータは民間の方にたくさんあり,それを解析する技術も民間にある。そうであれば統計を政府の専売にするのはもうやめて民間に開放すべきだ,こういうことです。今回の取り組みは統計の民営化の第一歩だと見ています。
ただ,この取り組みを進めるJCBとナウキャスト両社に考えておいて欲しいことがいくつかあります。
第1は,クレジットカードデータから読み取れる情報を上手に抽出することを心がけていただきたい。個々の利用者の利用額を集計することによって日本経済全体の消費の動向が見えてくるのは間違いないことです。しかしそれだけではいかにももったいない。
例えば,ある月に全体の消費額が10%増えたとしましょう。利用者全員が利用額を10%増やしたのかもしれませんが,そうではなくて,大口の利用者が20%くらい増やしてそれが全体の平均を引っ張ったのかもしれない。
前者であれば多くの人の幸福度が上がったと言ってよいが,後者であれば一部の限られた人の幸福度が上がったに過ぎない。もっと言えば,後者の場合は利用者間の消費の格差が拡大しているので社会的には望ましくないという面があります。
これは一例に過ぎませんが,言いたいのは,利用額を闇雲に集計してしまうと大事な情報が消えてしまうことがあるということです。折角のビッグデータなのですから,それがもっている全ての情報をうまく吸い取るという技術を確立して欲しいです。
第2は,データの癖という問題です。
家計調査のような国の統計はサンプルの規模が小さいという難点はあるものの,色々な人から遍くデータを集めるというところに細心の注意を払っています。これに対してビッグデータは企業が業務を営む中で派生的に生まれたものなので,広く遍くというわけにはいかず,どうしても偏りというか癖というか,そういうものが含まれています。これを放置すると,出てきた数字が日本経済の姿を適切に映さないということになってしまう。クレジットカードデータもこの例外ではなく,そのカードを保有していない人の経済活動はそこには反映されません。
こういう癖はサンプルバイアスとよばれていて,その除去のための統計手法がいくつか提案されています。しかし残念ながら現状では万能な手法はありません。
上記2つのポイントはいずれも技術的に非常に難しい問題をはらんでいます。今回はビッグデータ解析のノウハウと豊富な経験をもつナウキャストが取り組みに参画しており,それらの問題解決に挑戦します。私自身、積極的に知見・ノウハウを提供し、この取組を支援したいと考えています。決してやさしくはないでしょうが,どんな成果が出て来るか今から楽しみです。
統計改革推進会議では,ビッグデータを使って経済統計を作る試みをいくつか立ち上げようとしていますが,今回の取り組みがその模範になることを期待しています。
酒井様:
我々はエコノミストですので、毎週あるいは毎月、足下の経済指標を見て景気の基調判断をしています。消費に関しては、財やサービスの消費を定期的にウォッチしており、クレジットカードの決済データでタイムリーに消費動向が見られる「JCB消費NOW」は重宝しています。
定期的なレポートのほか、テーマのタイムリー性とタイミングを重視して出すレポートでも活用しています。例えば、6月に公表した「ワクチン接種加速の経済効果」は、ワクチン普及によって先行きに明るい材料が出てくるのではないか、という人々や企業、政府の関心の高さを踏まえ、「今だ」というタイミングで分析しました。
こうしたレポートは当社のウェブサイトに掲載しており、報道メディアやみずほグループ内外の経営者、政府関係者の方々に幅広くご覧いただいています。
嶋中様:
私は日本経済の中でも家計・雇用を担当しております。「JCB消費NOW」は特にサービス消費に着目して使っていて、コロナ禍においては「旅行」「宿泊」「外食」などの動向をよく見ています。最近は、業種や業態ごとに見る機会が増えてきており、そういった面でも重宝しています。
嶋中様:
景気の先行き予測は我々マクロエコノミストの根幹となる業務です。「JCB消費NOW」の動きは政府統計ともよく合致しており、GDPの基礎統計に含まれるサービス産業動向調査や特定サービス産業動態統計調査などの政府統計の先読みとしても使わせていただいています。
先読みの指標としては、ほかにも「日経CPINow」などの高頻度データや業界統計なども使っています。サービス消費を早期に把握する上では「JCB消費NOW」がかなり優れていると思います。
酒井様:
同じサービス業でも、コロナの影響を受けている業種と受けていない業種とで大きな差があることが今回のコロナショックの特徴だと思っています。大きく影響を受けている業種の動向に対する関心は特に高いのですが、政府統計の公表にはどうしてもタイムラグがあり、足下のデータを早く把握したいというニーズに応えられないのが現状です。また、例えばGDPだと耐久財・半耐久財・非耐久財・サービスという粗い分類しかなく、業種別の跛行性に関心がある場合には十分に対応できません。
その点、「外食」「宿泊」といった細かさでサービス消費の直近の動向を拾える「JCB消費NOW」は、政府統計の情報を補完したり、先行きの予測を行う上で非常にありがたい存在です。
やはり統計ユーザーとしては、経済へのショックが発生したときにどのような影響があるのか早く見たいわけです。政府統計だと通常1ヶ月から2ヶ月遅れ、特にサービスは第3次産業活動指数だと2ヶ月ほどタイムラグがあります。コロナ禍もあり、少しでも早く足元の動向を把握したい中で、エコノミストをはじめ消費データをウォッチする人たちの中で「JCB消費NOW」へのニーズがますます高まっているのではないでしょうか。
酒井様:
今は特にコロナ禍でショックを受けた業種の動向を中心に、分析結果を企業の皆様にご説明させて頂いています。今どれくらいまで打撃を受けていて、先行きどういう回復ペースを辿ることが予想されるのかをエコノミストとして説明することが求められています。
「JCB消費NOW」を使って足下の動向を「見える化」することで、皆様から「非常にわかりやすい」と評価いただいています。そこからさらに先行きの回復ペースを我々なりに分析するわけですが、それに対しても非常に高い評価をいただいています。
また、例えば「今後ワクチンが普及して政府がGoToキャンペーンを再開するかもしれない」というシナリオで先行きを考える場合に、昨年のGoToキャンペーン実施時から足下までの「JCB消費NOW」の動向を踏まえて「過去はこういう動きで足下はこうだから、先行きはこうなるのでは」とつなげて分析するのは、聞き手からしても説得力があり、大きな利点だと感じています。
酒井様:
昨年のGoToキャンペーンの効果に関しては、政策実施のタイミングの是非は別として、一時的にサービス消費が盛り上がったことは「JCB消費NOW」でも見てとれます。他のデータでも補完できるとさらに複合的な見方ができますね。
また、「ワクチン普及によってこれくらい人出が増える」という見通しが立てられれば、過去の「JCB消費NOW」のデータとモビリティや人出データを組み合わせて分析することによって将来をある程度予測できます。
実は先日、菅総理に「ワクチン接種加速の経済効果」の内容をご説明する機会があり、「ワクチンが普及したら消費・日本経済にはこういう影響があるだろう」ということを「JCB消費NOW」の対人サービス消費のデータを使って説明しました。また、新型コロナウイルス感染症対策の進捗に関する関係閣僚会議でも有識者として同レポートをもとに説明させて頂く予定です(※)。
※ナウキャスト註:2021年6月30日の第2回新型コロナウイルス感染症対策の進捗に関する関係閣僚会議で説明。
今回は我々の分析がワクチン接種加速という政府の方向性にタイミングよくマッチしたことが大きいと思いますが、民間のシンクタンクが客観的な立場でデータを用いて政策効果を論じるということに関しては、政府サイドからも歓迎する向きがあると受け止めています。
嶋中様:
これは長所でもありますが、元データがクレジットカードなので、どうしてもクレジットカードで買うものに強みがあるという印象があります。旅行などの高価なものはクレジットカードが使われやすいためサービス消費はよく捕捉できる一方、日用品や食料品などの財消費に関してはそういった面も踏まえて、総合的に見たほうがよいと個人的には感じます。今後キャッシュレス決済の浸透と共にクレジットカード決済が増えていけば、自然と高額消費への偏りは改善されるかもしれませんが。
酒井様:
私は、消費者の属性と消費行動とを紐付けた分析に関心があります。例えばコロナ禍において、ある属性の人は消費が大きく落ち込んだ一方で、ある属性の人はそれほどでもない、といったデータが拾えるのであれば、政策上どういう人に対してどういう支援をすべきかを検討する材料になります。一口で「家計」といっても色々な方がいます。コロナでダメージを受けた方とそうでない方、ダメージを受けやすい方とそうでない方がいますので、そういった消費者の属性と紐付けるようなかたちで「JCB消費NOW」のデータを使えれば、我々の経済分析にも幅が出て多面的な分析ができると思います。
酒井様:
今後、ワクチンが普及していく中で、コロナ禍から徐々に経済活動が正常化していくフェーズに入っていくと認識しています。そこでのトピックの一つが、いわゆるサービス消費のペントアップ需要です。ワクチンが普及して経済活動が正常化すれば、サービス消費はコロナ前の水準に戻っていきます。さらにプラスアルファとして政府が再びGoToキャンペーンのような需要促進政策を実施する可能性もありますし、これまで長い間人々が旅行などを我慢してきたことの反動がどういったかたちで出てくるのかが、短期的には一つの大きなトピックになるでしょう。今年の後半から2022年にかけてのサービス消費、特にどういう人がどういうところにお金を使っていくのかが、一つの注目点だと思います。
また、コロナ禍で生じた潮流の変化、例えばEC消費の進展などが構造的なものだとすれば、それがコロナ後の世界にも残る可能性があり、構造的変化がどういった形で引き継がれ、どのように推移していくのか、というのは長期的なテーマです。そもそもコロナ禍以前を振り返ると、アベノミクス期でも消費の伸びは弱かったわけですが、これがコロナ後も変わらないのか、消費の裾野を広げていく余地はどこにあるのか、といった点が今後の経済成長を考える上での一つの大きなキーになってくるのではないかなと思っています。
酒井様:
経済が正常化してすべてが元に戻るのか、元に戻らず新しい世界になるのか、一部戻って一部戻らないのか等、様々に考えようがあって、今の時点では正解が無いとは思います。ただ、リモートワークやECといった潮流はコロナ禍において進展しましたが、おそらくコロナ後もそうした流れは一部残っていくのかなと。もしかしたら、ソロ化、要は個人が閉じこもってコミュニティに属さず生活していく世界観があるかもしれないし、それに対応した消費需要が生まれるかもしれません。また、これまでは高齢者のEC利用率は他の世代に比べて低かったけれど、今後は高齢者にもEC利用が浸透していくかもしれない。そうすると高齢者にターゲットを絞った体験型サービスなどの新しい消費体系が現れるかも、などと考えることは非常に面白いですし、それが経済にどのくらいのインパクトを与えるのかをテーマとして追求していきたいですね。
酒井様:
分析のテーマにもよりますが、速報性の高いデータを見ていると、我々の見立てと違った動きに気づくことがあります。例えば、緊急事態宣言が解除されればサービス消費が回復すると思っていたが回復していないとか、逆に我々の想定を超えて回復しているとか。それを見て、例えば「高齢者の方はワクチン接種によって我々が思うよりも活発に動き回って消費しているのではないか?」などと推測します。
実際のデータを見て「あれ?」と思うところから、分析のモチベーションやテーマのアイデアが生まれます。「あれ?」という感覚はすなわち我々の見立てとのズレであり、そのズレをなるべく早く認知するには速報性の高いデータが必要になってきます。そういう意味で、足下の動きをいち早くとらえて「あれ?」というポイントに気づけるという価値を「JCB消費NOW」に感じています。
嶋中様:
時系列でタイムリーなデータがパッと取得できる「JCB消費NOW」のようなサービスは、とりあえずデータを見てみよう、という感覚で分析にあたれる点が魅力的ですね。「これを調べて欲しい」というお客様の要望を受けての分析と、自分の問題意識の中での独自分析の両方で、これからも役立てていけたらなと思っています。
(インタビュー日:2021年6月29日)
私はファイナンス部という部署に所属していますが、いわゆる経理や財務ではなく、ファイナンス・ビジネスパートナーとして、セールスやマーケティング、オペレーションなどのチームと密に連携し、ビジネスや消費者の動向、今後の予測を掴みながら、実現していきたいブランド構築に向けてどのようにお金を使っていくかを決める役割を担っています。
世の中には様々なデータがありますが、結局それらを有効的に活用できなければ無駄になってしまうので、我々はデータの購入をあまりしていません。
これまでは、玩具市場のリサーチや取引先との情報交換、ブランドの印象を聞くアドホック調査などを行い、アクションやプランの意思決定の参考にしてきました。しかし去年、新型コロナウイルスの感染が広がる中で市場の動きが流動的になり、社内で持っている情報だけでは何が起きているのか非常にわかりづらくなりました。社内からも、コロナ感染の拡大で足元の動向が見えづらい中で「個人消費の動向を追いたい」「ある程度リアルタイムで情報が欲しい」といった声が上がってきていました。
市場全体の動向としてどこに消費者のお金の使い道が向かっているのか知りたいと思っていた時、日本経済新聞などの報道で参考にされている「JCB消費NOW」を目にし、無料トライアルに申し込んでみたのが最初です。
実際に使用してみると、2週間に1度の更新頻度に加え、サンプル数が実際の市場データとして非常に大きく、業種も相応に網羅されていてブレイクダウンのレベル感も我々の求めるものに合致していました。また、昨対比とインデックスでデータを取得できるところも、使いやすいと感じました。何より、正に我々が欲しかったデータ(※後述の2020年10月の消費データ)のがあったので、無料トライアルから有償会員に移行することにも迷いはありませんでした。
半月に1度のデータ更新のタイミングでサービスサイト内から各データをダウンロードし、各業種の推移が一括で見れるよう自社で整えたグラフに落とし込んで、社内のミーティングで活用しています。具体的には、週に1度のビジネスパフォーマンスレビューで足元の消費動向を捉えるための情報のインプットとして毎回「JCB消費NOW」を使用しています。
例えば、去年の10月、すごく売り上げが下がったんです。なぜだろうと「JCB消費NOW」のデータを見た時、ちょうどその時期すでにGo To トラベル事業が始まっていて、消費者のお金の使い道がどちらかというと「旅行」などの「コト消費」に向いていたことがわかりました。そこから「玩具市場自体がその影響を受けて下がっていたため、我々の想定より売り上げが伸びなかった」という仮説が見えてきました。そして、この傾向が続くのか続かないのか、データを一つのエビデンスにしながら次のアクションプランの議論を進めることができました。
今年の2月後半から3月頃、我々が手元に持っている限定的なサンプルサイズのトラフィックデータで人出が回復してきていたので、マクロでも同じ傾向が出ているのかを「JCB消費NOW」で確認していました。手元のトラフィックデータに比べると2週間のタイムラグがあるので、先行指標としてではなく裏付けとしての活用でしたが、マクロでの裏付けができたことで「基本軸はオンライン販売だが、人出が回復してきているので、5月のゴールデンウィークは店頭をきちんと構えよう」とか「セール施策を行ったら一定の効果が出るのでは」などのアクションプランの提案や意思決定につながっていきました。
結局、4月後半に大阪で緊急事態措置がとられて多くの店が閉まったため読みは少し外れましたが、人は郊外には出続けていたので、人がまったく外に出なかった1月のようなひどい状態にはなりませんでした。これまで通りECに重点を起きながら、実店舗もある程度準備をするという戦略が結果的には功を奏しました。
昨年全体では、おうち時間が増えたことと弊社のオンラインシフトが進んでいたこともあり、当社の売上はプラスに働きました。「JCB消費NOW」のデータでも「EC」消費の潮流を捉えることはできていましたね。
我々は基本的に屋内で遊ぶ玩具を販売しているので、お金の使い道が、人々が外に出て体験する消費に動いているのか、それとも家の中で過ごすタイプの消費に動いているのかを見るためにデータを活用しています。そのため、「小売」「旅行」「飲食」「化粧品」「娯楽」「EC」など幅広い業種のデータをチェックしています。
特に注目しているのは、「EC(オンライン)」と「EC以外(リアル店舗)」の消費データです。EC全体が伸びているのか否かという点を見ています。我々が取引先から得られる情報もあるのですが、さらにマクロな観点から消費をとらえるために注目しています。
また、消費者が可処分時間をどこに使っているか、消費動向がどこに移っているかといった行動変容に関わる業種も注視しています。各業種データでは、「旅行」「飲食」「機械器具小売(家電)」が非常に流動的なので、こういった業種をチェックすることで同じお金の使い道がどこに向かっているのかを見ています。
最後に、基本的に安定して消費される「飲食料品」のような業種も、大きく増減しているものが無いかをチェックしていますね。
業界柄、多くの市場データを得ているわけではないので、データやファクトに基づいたディスカッションがしにくい部分があります。それぞれが個人消費者として感覚的に「なんとなくこうではないか?」という意見を持っていても、議論を進めたところでどれも1意見に過ぎず、その中で「これ」とまとめることが難しい。
でも、「JCB消費NOW」のようなサードパーティから「目に見えるデータ」という情報が得られると、「これがファクトだね」と即座に共通認識が生まれて議論をスムーズに進めることができます。なので、どちらかというと社内からは驚きよりも「感覚としてはそう思っていたが、データで裏付けられてよりしっくりきた」といった、納得感が増したという声が多いですね。エビデンスが1つあることで、より建設的なディスカッションができていると思います。
今でも十分期待値をクリアしているのですが、先日、担当の中澤さんから現在検討中の新機能やサービスの話を聞き、その会話を通じて色々と期待することが出てきました。
1番は、やはりデモグラフィック分析です。これができるとさらに魅力が増すと思います。我々のブランドの使用者のデータは購買データからは取得できず、主体はリサーチベースです。業種ごとの消費の動きと同時に消費者の属性まである程度わかれば、さらに一歩進んだインサイトを得ることができます。
また、都道府県別やエリア別の消費の動きも確認できるといいですね。我々はまだ首都圏特化型なところがあり、裾野を広くしていきたいと考えています。そうした時、マクロでエリア動向や傾向を先に認識できると助かります。また足元ですと、首都圏から郊外に人が出ているといった情報はとても役立ちます。
その他、玩具業界が見れたらという細かな点もありますが、今のところ現状のレベルで満足しています。今後も、サービスアップデートの提案の一助になれるよう、データを存分に活用させていただきます。
(インタビュー日:2021年8月25日)
我々ベガコーポレーションは、「LOWYA(ロウヤ)」を始めとする家具インテリアのECサイトや越境ECプラットフォームを運営する事業会社です。私は経営管理本部という部署に所属しておりまして、経営陣に対して外部環境分析のレポーティングをしたりIR資料を作成したりしています。
昨年、コロナ禍で家具ECの需要が急進し当社の売上も伸びたのですが、どこまでがマクロの環境に起因するもので、どこからが当社固有の伸長なのかを客観的に見たいと思い市場データを探していたところ「JCB消費NOW」を知り、無料トライアルを申し込みました。
基本的には、データが更新されたタイミングで家具やEC全般など当社の事業領域に近いデータ、あるいは財・サービスなどマクロの消費動向がわかりやすいデータを見ています。自社の受注データと照らし合わせ、自社の受注動向がマクロの環境によってどの程度説明できるのかを検証するために使っています。
他にも大手検索エンジンの検索データやショッピングモール内の家具カテゴリーの販売動向などを見ていますが、「JCB消費NOW」のような取引やお金の動きを直接的に捉えたデータは希少だと思います。また、大手クレジットカード会社の決済データということで、信頼のおけるデータセットですね。
当社はEC専業なので基本的にはECのデータをベンチマークにしています。ただ、ECの動きは、リアル店舗の動きと照らし合わせることで「なぜこう動いたのか?」といった意味をより抽出しやすくなります。家具全般が売れたのであれば、店舗とECで同じような動きになるでしょうし、そうではなくて昨年から続いているコロナ禍の影響で外出できないような状況が非常に大きなインパクトを与えているのであれば、店舗とECの動きは当然乖離してくる。店舗とEC、両方のデータを見て、お客様がどのような動きをされているかを想像しています。
例えば、去年の秋口に売上が思ったよりも伸びなかった時期がありました。8月後半に旗艦店のECサイト「LOWYA」のフルリニューアルを行ったので、その影響で少し売上が伸び悩んだのかというふうにも考えたのですが、他方で同時期にGo Toキャンペーンが行われていて、飲食や旅行に消費が流れたのではないかという仮説も持っていて、どちらなのかを知りたいというニーズがありました。
そこで「JCB消費NOW」を見ると、その時期は家具EC全般が落ち込んでいたことがわかりました。他にも外出の影響を受けそうな業種が落ち込んでいた。一方で旅行や飲食の消費は伸びていたので、秋口の売上減少はマクロの要因に連動していたのだと結論づけることができました。自分たちの仮説通りのデータがきれいに出てきて、客観的に当社の実力を測れたといった点でよかったですね。
そうですね、自分たちのことを客観視するのは重要だと思っています。売上が思い通りにいかない時期であっても、それがマクロの要因であれば当社の実力値ベースで見れば市場よりもアウトパフォームしている可能性がありますし、逆に売上が伸びていたとしても、それがマクロの要因に引っ張られているだけであって市場よりもアンダーパフォームしていたら安易に喜ぶべきではないでしょう。自分たちの今の実力値を客観的に測るためには、良いデータだけでなく悪いデータも含めて外部データを活用することが重要です。
売上動向の要因分析において、事業部の持っている仮説を検証する際にも活用しています。事業部は、先ほどお話した検索データやショッピングモール内での販売動向のほかに自社ECサイトのアクセスデータやコンバージョンデータなどの細かいデータも見ていて、それらのデータに彼らの経験値を加えた上で売上の増減を解釈しています。当社のデータ自体が、ある程度家具EC市場全体の動きを示している部分もあるとは思うのですが、当社が特段大きなアクションをしていないのにサイトアクセスに大きな増減が出たような場合は、マクロの要因が影響していると考えられます。
例えば、事業部側が自分たちの売上変動の8割をマクロの要因で説明できると考えている時に、「JCB消費NOW」で市場全体の動きを見ながら、「8割じゃなくて9割では」とか、逆に「7割くらいではないか」というように、大きな乖離がないか検証できます。マクロのデータを使って検証することで、より適切な仮説が見つかり、違うアクションにつながる可能性があると思っています。
「JCB消費NOW」はクレジットカードデータかつ売上というダイレクトに市場に結びつく数字なので、客観的なデータとして信頼を置いています。また、過去のデータまで遡って提供いただけるので、YoYだけでなく、コロナ禍の影響を受ける前の2年前との比較でどうなのか、他の業種がどう動いているか、といったところも合わせて見ることができます。家具ECだけにフォーカスせずに、それ以外の業種も含めて総合的に客観的な分析ができるところに、「JCB消費NOW」の優位性があると思います。他の業種のECがどうなっているのか、リアルの財・サービスがどうなっているのかを示すデータは、家具ECがなぜこういう動きをしているのかを説明するために必要です。
マクロの動向把握においては、家計調査や商業動態統計などの政府統計、他社IR資料、検索データやショッピングモール内での販売動向などが定点観測の対象でしたが、「家具EC」に絞られ、かつ消費にダイレクトに結びついたデータというのは参照できていませんでした。
ただ、コロナ禍の前までは、家具ECの市場全体が毎年5%くらいの成長率でずっと伸びていて、そんなに大きく市場が動くことがなかった。それがコロナ禍以降、需要が一気に伸びて当社の売上も伸びました。これまでにない大きな動きを前に、当社が市場全体の中で相対的にどの位置にいるのかを把握したいニーズが急激に高まり、「JCB消費NOW」のようなマクロデータが必要になりました。
当社としては、自分たちは市場以上に成長しているし実力もあると思って日々事業活動をしていますが、やはりIRの観点で投資家から「この売上の伸びは一過性なのではないか?」と言われた時に、客観性をもって「一過性ではない」と説得するにはデータがないと難しい。「今はこのように市場が動いていて、その中で我々はアウトパフォームしているんです」と、数字でもって示したかった。実際、IR資料でそれを示すために「JCB消費NOW」を引用させていただきました。このデータが無ければ、「市場は今YoY130%くらい」などと感覚値で言っていても説得力がなかったと思います。
また、当社は現在、旗艦店「LOWYA」を戦略上の最優先に置いており、ECモールの店舗よりも旗艦店の方にマーケティング投資を集中させているのですが、「JCB消費NOW」のデータを見ると旗艦店の方は圧倒的に市場をアウトパフォームしていて、ECモールの方は市場より少し弱い。「JCB消費NOW」を引用することによって、ECモールを含むLOWYA事業全体として市場成長を上回って推移していること、更に、自分たちが注力している旗艦店に関しては非常に良い結果が出ていることを、データで伝えることができました。
「JCB消費NOW」の無料トライアルで「家具」や「EC」のデータがあることはわかったのですが、やはりダイレクトに「家具EC」を見たいと思い、無料トライアルを開始して数日後に設定されたウェブ会議で率直に相談させていただきました。そうしたら、実はその時点でもう開発が進んでおり、早速翌月からデータを出してもらうことができました。ただ、最初に提供されたのはIM(一人当たり金額の変化)データだけで、「家具EC」は伸びるどころかYoYが少し下がっていました。「我々の感覚からすると少し違うんですよね」とお伝えしてEM(消費者数の変化)データを加味していただいたところ、我々の仮説と合致するデータが出ました。すぐに営業の中澤さんに「すごくいいです!経営陣まで共有させていただきます」とメールしたのを覚えています。去年はコロナ禍で「家具かつEC」のような業種が非常に大きく影響を受けたので、そこが顕著に変動しているのがわかり非常に良かった。市場がどう動いているかを高い解像度で理解できるデータは、正に我々が求めていたものでした。
過大な要求かもしれませんが、日次や週次などより細かな粒度でスピーディーにデータを提供いただけると嬉しいですね。もちろん今でも半月ごとにデータが更新され、政府統計などに比べて相当粒度が高くスピードも速いと思っています。ただ、当社では受注データが毎日一定時間ごとに全社員に対して配信されています。更に、全社員がBIツールを使い受注データを詳細に分析できるので、市場データもそれと同じくらいの粒度で揃えられればデータ活用のレベルがより一層引き上げられると思います。
我々は、お客様にインテリアを自由きままに楽しんでいただくことを目指していて、そのために品揃えやサービスの強化に日々取り組んでいます。当たり前のことではありますが、お客様の欲しいものが「LOWYA」にあり、かつ「LOWYA」での購入体験に満足いただければ、それが必然的に売上につながっていきます。市場をアウトパフォームし続けるということは、ちゃんとお客様に選ばれ続けている、評価され続けていることを意味すると考えています。だからこそ常に市場と相対化して自社をとらえ、その市場を上回るスピードで成長することにこだわっているのです。自社を客観的に把握しながら経営していくために、これからもデータを活用していきます。
(インタビュー日:2021年9月2日)
藤井様:
2021年の1月から始めたプロジェクトでは、新型コロナウイルス感染症対策と経済活動のトレードオフに関する分析を行っています。
コロナの感染状況は都道府県ごとに違うため、都道府県ごとの高頻度な経済データが必要でした。しかし、日本では月次の都道府県ごとのGDPなどというデータは存在しないので、我々で手作りしようと決めて、公的統計データの第3次産業(サービス産業)活動指数や地域別IIP(Indices of Industrial Production: 鉱工業指数)を用いて、月次の都道府県GDPを独自で作成しています。ただ、コロナに関しては直近のデータが必要で、例えばこのプロジェクトのWebサイト上で公開しているのは先週までのデータですが、その「先週までの経済活動」というのは本当にデータが少ないんです。
そこでナウキャストをするために速報性の高い「JCB消費NOW」を使わせていただいています。例えば、現在は7月ですが、5月頃までは他の公的なデータを用い、それ以降は「JCB消費NOW」などを使って更新しています。速報的なデータとして「JCB消費NOW」を使い、その後、公的統計などが発表されたらそちらで置き換えていくかたちです。
仲田様:
おっしゃる通り、新型コロナに関する動向は状況によっては毎週アップデートしないと意味がありません。でも、ナウキャストの部分は前述のRDEIが無い。都道府県別GDPに関してはそこまで速報性は求められないものの、3ヶ月前のGDPを元に議論をしても仕方ないので、代わりに何かを使わなければということで、当初は人流データを使っていました。問題は、人流と経済の相関関係が変わってきたことです。2020年前半は、人流が大きく動けば同時に経済活動も動くというのがはっきりしていたのですが、2020年後半になると、人流を抑えながらも経済活動を維持できるように変化してきた。人々に行動変容が起き経済活動がコロナ禍に明らかに慣れてきた頃、人流だけを元に最新のGDPをナウキャストするのはよくないと考え、人流以外のデータを取り入れていかなくては、となりました。そこで、「V-RESAS」の中で一部データが無料公開されていた「JCB消費NOW」に注目した、という経緯です。
藤井様:
一番役に立っているのは速報性です。また、地域別かつ高頻度なデータというのはすごくよいと思っています。我々は都道府県別GDPというのを生産サイドと消費サイドから個別に作って最後にまとめています。消費データに関しては、RDEI(Regional Domestic Expenditure Index)という地域別支出の総合指数があるのですが、公表は3ヶ月に一度なので数ヶ月のタイムラグがあります。そこで「JCB消費NOW」のデータが非常に役に立つのです。
新型コロナのショックや昨年の動きを見てみても、地域別にけっこう異なるトレンドがあります。例えば、四国の消費だけがほかと違う動きをしていたりなど。そういう地域別のバリエーションも捉えられるというのは、すごく興味深かったです。新型コロナが直撃した都市と、感染者が出ていなかった地方とでは違いがありそうだなとは思っていました。ただ、感染者が全然出ていない田舎の方でも消費がシュリンクしたという話もあって、その差がいったいどの程度なのか、ちゃんと数値で見れるのはよかったですね。
仲田様:
それは非常に面白いですね。今後どこかでGoToトラベルの検討が始まると思いますが、その時に起こり得る議論として、ワクチン接種希望者が接種済みという状況で、医療リソース不足の懸念と経済効果への期待をどうトレードオフするか、という問題があると思います。個人的には、前回のGoToトラベルの効果や感染への影響に関する分析が供給不足だと思っており、ミクロレベルのデータを使ってできれば、より意義ある分析ができそうです。
藤井様:
私も同感です。どこに旅行をして、さらに何を消費したのかがわかることは、コロナ禍における経済分析にとって重要なファクターだと思います。今は、GoToトラベルと感染拡大との因果関係が全く明らかになっていなくて、データやファクトに基づいた議論になっていない印象です。京大の西浦さんがデータを集めたという論文はあるのですが、感染に与えた影響や因果関係まではわからないので、「JCB消費NOW」のようなデータに期待したいです。
仲田様:
まず、コロナ危機によって、「ちゃんとデータを見て分析して、目下およびこの先の政策を決めなくてはダメなのでは」ということが多くの人に伝わったのかなという印象があります。平時に戻った後に今ほど速報性が求められることは多分無いとは思いますが、データに基づいて政策判断をすることの重要性を、今は全国民が感じているのではないでしょうか。個人的には、コロナ危機が収束してもそういった方向に世の中が向かって欲しいなと思っています。
藤井様:
「JCB消費NOW」の特徴としては3つあると思います。一つは頻度、もう一つが速報性、最後が100万人というサンプル数(※2)です。また、そのサンプルがアンケートではなくて実購買データであることも強い。最後の点は政府統計も参考にすべき点だと思っていて、やはり実際に100万人の人間が使った消費データというのは、仮に高頻度・速報性がなくても、年次であったとしても重要なものです。今ほどの速報性が今後も求められるかはわかりませんが、高頻度性に関してはニーズは色々あると思います。例えば災害時。日本は大雨、洪水、地震が多い国ですが、年次データでは平均化されてしまい、月単位で大きく落ち込んだ後に急回復した、などの細かい動向を捉えられません。災害みたいなケースでは少なくとも月次、欲を言えば週次で、さらに地域別のものを見なきゃいけない。そういうニーズは、これからの日本でかなり出てくると思います。その点、実際に消費した地域やカードホルダーの居住地や実際に消費した地域がわかって、消費への影響をダイレクトに計測できる「JCB消費NOW」は、重要な役割を果たせると思います。
(インタビュー日:2021年7月2日)
※1 2021年11月11日に「JCB消費NOW」リニューアルし、「From To 指数」の提供を開始しました。詳細は以下のプレスリリースをご確認ください。
JCBとナウキャスト、国内消費指数「JCB消費NOW」をリニューアル
※2 現在のサンプル数は約1000万人。
三井住友トラスト・アセットマネジメントは、総運用資産およそ85兆円のアジア最大級・日本ナンバーワンの資産運用会社です。私が所属するリサーチ運用部は、企業調査やマクロ分析などを行い、運用判断・投資判断に資する情報発信をすることをミッションとしています。
当社リサーチ運用部の組織は、株式アナリストとクオンツアナリストを同一の組織内に要していることが特徴的です。この組織の形をとることで、オルタナティブデータをはじめとした様々なデータの活用や仮説検証を広範に行うことができていると自負しています。こうした組織の形をしている運用機関はないと思います。
この形にした目的は、セントラルリサーチの体制を作りたいという会社の意図があったからです。「今後のプロダクトは、ジャッジメンタル・クオンツ・株・債券と括れるものばかりではなくなるだろう」と見据え、「まず、いろんなアスペクトで様々なリサーチリソースを活用できるようにしよう」と意図してこの体制になっています。
また、この体制をとっていることで、今、リサーチ運用部内でコラボレーションが起きていて、分析が高度化してきています。そのコラボレーションの触媒になっているのがオルタナデータとかAIとか新たなデータとか新たな分析手法であるという感じです。
2017年・2018年頃から「データの活用もしくは新たな技術の活用に関して真剣に取り組まないと」と意識するようになりました。その頃、世の中のいろいろな活動がデジタル化されていく中、データ化される経済事象が非常に増えていったり、MiFID2や金融商品取引法の改正などで、機関投資家の情報優位性が低下していくという流れがありました。それらを並べた時「これからはデータの分析に力を入れないと」という結論に至り、それをさらにドライブさせたのが新型コロナウイルス感染症でした。当時は、準備体操してたらいきなり走れと言われた感じでしたね。コロナで経済の前提条件がすごく変化していくと言う予想がされていく中、「これ今やらないといつやるの」といった感じで御社とも契約させていただきました。
それは実感として大きいです。体制は既にできていたので、急速に変わる環境の中、社内で様々な新しいことにチャレンジしやすくなりました。我々としてもオルタナティブデータを使っていろいろなものの解像度が上がったり、様々な仮説を立てる起点が恐ろしく増えました。良いリサーチができて運用につながった実感もかなりあります。私は、「いい投資アイデアは良い仮説構築をどれだけ数作ることができるか」だと思っていて、そこから一定の確率で良いものが残っていくということだと思っています。なので、仮説の起点がオルタナティブデータを入れることですごく増えて満足しています。
ほぼ全員です。例えば、2020年に巣ごもり指数を開発してGPSデータやアプリ・ウェブのトラフィックデータ、「JCB消費NOW」のホテル・娯楽のデータなどを活用し、企業と個人それぞれの巣ごもり具合を測ったりしました。これは戦略の構築にも役立ちますし、そこから示唆される個別企業の分析にも役立ちます。
また、クオンツのプロダクトでオルタナティブデータを用いてファクターのエンハンスを行う際も役立ちます。例えば、バリューというファクターに投資するとき、バリュートラップに引っかからないために、ニュースを解析して注目度が著しく落ちているバリュー銘柄には手を出さない。また、ファンドの資金フローの情報を使いながらモメンタム銘柄に投資するときに、過度に機関投資家が群れていないモメンタム銘柄に投資するなどです。
日々のジャッジメントからクオンツ運用でも応用できるところは応用します。例えばアイデア出しの時、最初クオンツが「このデータを使うと、こうしたスクリーミングができる」と提出して、そのあと個別企業のアナリストが「そのスクリーミングだと、これを検知するのに使えるのでは」といった仮説が出てきて、それをまたクオンツが検証する。こうした“ファクターのブラッシュアップ”でもデータが活用できていて、組織全体でデータを活用できています。
コロナの感染が拡大した初期は、「巣ごもり消費がどの程度盛り上がっていくのか」「反・巣ごもり消費がどの程度下がっていくのか」といったことのモニタリングに活用させてもらっていました。メッシュの細かさと速報性が「JCB消費NOW」の非常に良い特徴だと思っています。また、地域別や世代別もわかるので、外食であれば、「都心と郊外はこれから分かれていく可能性がある」といった時に非常に活用できます。
他では、昨年の夏の終わり頃に高齢者の方のワクチン摂取が8割以上済んだ時、「高齢者の人から消費し始めるのでは。その場合、何に消費し始めるのか」と思いました。「JCB消費NOW」のデータを見ると、高齢者の人が旅行し始めていることを確認することができたので、そのような形でメインに使わせてもらっています。
あります。完全にそういった点が複数データで分析を行う醍醐味です。「価格を上げることができている、できていない」を見るとき、例えばSNSデータでブランド力の変化に関する仮説を持って、その検証を「JCB消費NOW」のような消費データで行うといったことが考えられます。仮説構築と検証で使うデータは常に複合的な使い方になると思います。
短期的に期待することは、我々がデータ分析で突き詰めようとしている“リオープニング関連”と“インフレ価格”分析に関することです。リオープニングに関しては、カテゴリーをリオープニングに応じる細かなメッシュで提供してもらえると嬉しいです。今でも細かく外食を見ることができ非常に有用ですが、他にも、カード消費でキャッチできそうなブライダルやフィットネス、学習塾、介護、インバウンド関連などの切り口のメッシュで情報をもらえると非常に役立ちます。
インフレ価格動向に関して、「JCB消費NOW」は消費の増減を価格要因・人数要因で分けて提供していただいていますが、今後そこから価格転嫁に関する動きを分析できたら良いと思っています。今後サービス業で労働力の供給制約が出てきた際、それが単価にどう影響するのか、値段が上がるものは何か、上がらなくて収益が圧迫されるものは何かという種別分けが行えるとありがたいです。
中長期で考えると、我々は企業の非財務情報をオルタナティブデータで補完していきたいと思っています。例えば、働きがい・企業文化などの評価データを使って企業の組織力や人材力を分析したり、特許情報を使って技術力を分析したりすることを目指しています。その中で、御社のような消費に関するデータを扱うベンダーに期待するのは「ブランド力」の分析です。例えば、企業別の価格帯の違いや、個人向けのサブスクリプションサービスの状況分析も良いと思います。
また、どこに支払っているかもわかるのであれば、個社ベース・産業ベースの寡占度、集中度、シェア変動に対する示唆が出ると興味深いです。我々は、「コロナの期間が当初の目論見よりも長引く→今後、融資や助成金が減ってくる→経営厳しくなる企業が増える→業界再編が起こる圧力が高まる」という仮説を持っています。こうした仮説に対して、個人の消費動向からどのようなことが見えるかといった、より具体的な仮説構築の材料が出てくると興味深い分析になると思います。時系列もあれば仮説に対する検証ができますね。
そうですね。最初に言った通り、今後もデジタル化されていく経済事象は増えることはあれど減ることはないと思います。もしかしたら、GDPR(EU一般データ保護規則)によってデータ利活用の制約が強くなるということもあるかもしれませんが、基本的には将来予想をもとに投資活動をする我々の観点において、データ活用の重要性はますます高まっていくと思います。
(インタビュー日:2022年2月10日)